いわしブログ

京都のウィンドミル代表いわしのブログです。wordpressやfacebookの設定、ブログ運営について備忘録代わりに更新してます。最近は動画も作ってます。

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出版業界に未来はあるか 出版状況クロニクルと出版業界の動向

      2014/09/04

出版状況クロニクルと出版業界の動向 本屋さん

2013年の出版物販売額は、30年前の水準に

いわしは以前、とても小さな出版社で仕事をしてたことがあります。本のデータをPCで編集して、印刷屋さんに出稿して、取次や書店に行って営業していました。

上から下まで何でもやらないといけないので大変でしたが、他に人がいないのだから仕方ありません。でも、この経験が独立したときの基礎になりました。それだけに、出版業界には深い思い入れがあります。

その出版業界が長期間の売上減に苦しみ、2013年の出版物販売額は、ついに30年前の水準に戻ってしまったそうです。

http://www9.nhk.or.jp/kabun-blog/700/176790.html

出版物売り上げ減 約30年前の水準に | NHK「かぶん」ブログ:NHK

ニュースによると、2013年の出版物販売額は去年よりおよそ550億円減り、1兆6000億円台の販売額は1984年と同じで、ピーク時だった1997年の販売高2兆6563億円からは5分の3程度に縮小する見通しとのことです。1年で販売額が500億程度のジュンク堂や有隣堂が1社消えてしまったようなものです。

出版科学研究所による1996年~2013年の出版物推定販売金額を掲載しておきます。出版状況クロニクル69から転載しました。

出版物推定販売金額1996~2013

書籍の販売額は、「半沢直樹」の原作、池井戸潤「オレたちバブル入行組」「オレたち花のバブル組」(文春文庫)が200万部超え、百田尚樹「永遠の0」(講談社文庫)が300万部超えというベストセラーもありましたが、去年よりおよそ120億円減の8000億円割れとのこと。雑誌の販売額はさらに大幅減の8950億円前後、去年より430億円も減ってしまったそうです。

出版状況クロニクル

そして、いわしが月に1度の更新を楽しみにしている、小田光雄さんの出版・読書メモランダム「出版状況クロニクル」でも、新年早々のエントリーから悲観的な出だしです。
「13年は大きな事件は起きなかったにしても、出版業界は正念場を迎え、14年はあからさまな解体の時期として顕在化してくるであろう。」うん、確かにそうなんだろうなぁ。

http://d.hatena.ne.jp/OdaMitsuo/20140101/1388502023

出版状況クロニクル68(2013年12月1日~12月31日) – 出版・読書メモランダム

次のエントリーでも、「危機の中にある出版業界を、社会要因と構造から限界集落にたとえ、そこで起きている現象を出版敗戦ともよんできた。そして今年はその不可避の帰結として、出版業界のあからさまな解体が顕在化してくるであろう」とあります。

記事によると、取次大手2社(トーハン、日販)の書店POSデータによる年末年始売上調査は最悪で、日販は6.5%減、トーハンは4.6%減と大幅なマイナスだったそうです。

http://d.hatena.ne.jp/OdaMitsuo/20140201/1391180442

出版状況クロニクル69(2014年1月1日~1月31日) – 出版・読書メモランダム

出版状況クロニクルは、小田光雄さんの「出版・読書メモランダム」というブログ内にあるカテゴリ記事の1つです。出版業界の現状やニュースを分析するという内容で、月1回記事が更新されています。出版業界の動向は、ここを見ていればだいたいわかります。

「出版・読書メモランダム」は、出版状況クロニクル以外にも「戦後社会状況論」や「古本夜話」といった、読み応えのある記事が満載です。

こちらは出版状況クロニクルの記事一覧です。

http://d.hatena.ne.jp/OdaMitsuo/archive?word=*%5B%BD%D0%C8%C7%BE%F5%B6%B7%A5%AF%A5%ED%A5%CB%A5%AF%A5%EB%5D

[出版状況クロニクル]記事一覧 – 出版・読書メモランダム

出版状況クロニクルは書籍版もありますね。

出版状況クロニクル 悪化する出版業界関連の数値

出版状況クロニクルに掲載されている出版業界の数値はどれも興味深いものばかりです。書店の売上高、書店数、出版物の販売額、取次や出版社の売上高・・・基本的にすべて悪化していますね。

その中で昔より増加したのは、書店の総坪数です。これは、小さな書店が淘汰され、大型店がどんどん増えたということです。あとはインターネットでの販売額も増えています。amazonの伸長を考えると、これも当然の数字ですね。

昔お付き合いのあった取次の大阪屋や日教販の状況は気になりますね。トーハンや日販はまだ大丈夫でしょうけど、基本的にどの取次も扱っている商品は同じなので、規模に劣る中堅はかなり苦しいと思います。もっと小さな学参専門の取次なんかはもっと大変なんだろうなぁ。

他にも、amazonのようなネット書籍販売や電子書籍の伸長、ブックオフなどの中古本市場の広がりなど、出版業界はネガティブなニュースばかりです。

出版業界に関するネット上の情報ですが、出版状況クロニクルの他に、ここもよく見てますね。書店業界紙の老舗で、本好きの方なら興味があるかと思います。

http://www.shinbunka.co.jp/

新文化 出版業界紙

出版業界の今後

以前にネットでこんな記事を見かけました。これを見てると書店もしんどいけど、出版社も難しいなぁと思います。

次にやばいと言われ続けてるのはマガジンハウスだけど、あそこも雑誌しかやっていなくて雑誌がぜんぜん売れなくなって息絶え絶えっていうかんじ。高年齢化も激しくて、出版不況で新卒の採用をものすごい抑制していて、特にマガジンハウスなんかたぶん100数十人ぐらいの社員数いないんだけど、20代が数人というすごいことになってます。おじさんだらけっていうかね(笑)。そして社内を見ると、おじさんが「昔は良かった」っていう自慢話ばかりしているという、かなり哀しい状況になっているらしいです。

そういえば、ちょっと前にたぬきちの「リストラなう」日記ってブログが話題になりましたね。ここは勤めていた出版社(ってもうほとんど周知ですねw)のリストラ事情や、自分の給与形態、出版業界の事情を赤裸々に更新して注目を浴びました。

http://ascii.jp/elem/000/000/527/527707/

ASCII.jp:ブログ「リストラなう」が出版社の内情を明かした理由 (1/5)|古田雄介の“顔の見えるインターネット”

もちろん、出版社も苦しいところばかりではありません。宝島社の女性誌は付録がすごいというイメージがありますが、この記事を読むと、ちゃんと考えがあってのことなんですね。

http://toyokeizai.net/articles/-/17463

宝島社はなぜ、出版不況でも稼げるのか? | 産業・業界 | 東洋経済オンライン | 新世代リーダーのためのビジネスサイト

記事中の「付録はオンラインでは絶対にマネできないという強みがあります。パソコンやスマホの画面からは、何もリアルなものは取り出せませんから」という言葉の意味は、ネットに対する紙媒体の差別化ですよね。でも、これは他の業界なら当たり前の話です。

昔と違って、良い本を出して出版流通に乗せるだけで、勝手に売れていくという時代が終わりつつあるのでしょう。

いわしは本が好きです。書店にはヒマがあれば寄っています。新聞や雑誌もよく読みます。でも、ネットでニュースやブログを見るのも好きですし、twitterも使ってます。メルマガもいくつか購読しています。昔の活字媒体は紙しかありませんでしたが、今はPCやスマホも立派な活字媒体です。自分が面白いと思うものであれば媒体は何でもいいのです。当然、媒体間の競争は激しくなります。

昔と比べると、電車の中で新聞や雑誌を読む人が減りましたよね。その代わりに、みんな携帯やスマホをさわっています。中身の良し悪しは別として、世の中に出回っている活字の総量はそんなに変わっていない気がします。

結局、出版不況なるものの正体は、再販制度に守られた特殊な業界が普通に戻っていく過程で起こっている現象なのだと思います。

本屋さんを応援 本は書店で買おう!

そんなわけで、出版業界の売上が落ちていくのは仕方ないことかもしれません。でも、いわしはやっぱり紙の本が好きです。これは理屈じゃありません。それに、きちんと編集された本というのは、ネットに比べると情報の質が断然違いますよね。

最近は書評サイトなんかで本の情報を得てから買うことが多いのですが、書店でたまたま見かけた本を買うこともあります。そんな本との出会いの場、本屋さんも好きなのです。大したことじゃないかもしれませんが、amazonが便利なのはわかっていても、本はなるべく書店で買うようにしています。

また、京都や滋賀にはこんな書店もあります。本のがんこ堂には何回か行ったことがありますけど、本に対する情熱と愛を感じますね。ぜひ応援したいなぁ。

http://gankodo.shiga-saku.net/

本のがんこ堂 ブログ

パルナ書房さんも面白い書店でしたが、昨年4月に閉店したそうです。残念・・・

http://d.hatena.ne.jp/bkpalna/

パルナ書房~京の表は壬生、裏に回れば島原の町の本屋~2013年4月でパルナ書房は閉店いたしました。店長失格ですが書店など出版業界のあれこれを語ります。

縮小しているとはいえ、出版業界自体がなくなるわけではありませんし、まだまだできることはあるはずです。いわしもなるべく書店で本を買って、本屋さんを応援します。

・・・でも、やっぱりamazonは便利なんですけどね (^_^;

出版業界とのかかわり

いわしが小さな出版社にいた頃のお話です。少しお付き合いのほどを・・・

いわしが独立前にいた会社には、傘下の事業がいくつかあって、その中の一つに出版事業がありました。いわしがその会社に入った時は、出版部門で出した本は1種類だけ、しかもその本は全く売れず、倉庫には在庫が山積みになっていました。
以前に違う出版社の似たような本がそこそこ売れたらしく、当初の計画ではすぐに売り切れると思っていたそうですが、世の中そんなに甘くはありません。しかも、出版をやっているのに取次や書店との取引が全くない。ルートもないのに、どうやって売るのでしょうか。
笑ってしまうような話ですが、出版経験者がいないのでどうしようもない。業界事情もロクに知らないままで事業を立ち上げると失敗するという見本みたいなものですね。

いわしは本が好きなので、そこの仕事をやらせてもらうことになったのですが、書籍や出版業界の経験はないので、何から手を付けていいのかもわかりません。
わからないなりにいろいろ考えたのですが、ヘタの考え休むに似たり。まずは当たって砕けろということで、大阪の大きな書店へ営業に行ってみました。

何軒回ってもそう簡単には取引してもらえないだろうなぁと覚悟してたのですが、最初の1軒目でいきなりOKが出て、次も取引成立。2軒とも簡単に決まって拍子抜けしました。
でも、これでわかったことは、この分野の書籍には明らかにニーズがあるということです。業界事情もロクに知らない営業マンが簡単に取引してもらえたのですから。

こうなると俄然やる気が出てきます。さっそく会社に戻って、うちの大将にこの分野の書籍がいかに有望なのかを力説しました。最初は渋っていましたが、最後は大将も折れて、本腰を入れて出版事業の立て直しをすることになったのです。

最初の半年ぐらいは会社に籠って、PCでひたすら本のデータを作りました。本は在庫以外に未刊のものが数十種類あったのですが、一度にデータは作れません。完成したものから手で製本して出荷していました。何せ自分で言いだしたことなので、成果を挙げるべく必死にやりましたよ。

最初のうちは大して動きもなかったのですが、しばらくするとぼちぼち反応が出てきました。少しずつ書店から注文が入るようになり、その数も増えていきました。

そして、東京へ営業に行った時に取次の方から声をかけてもらって、取次との取引が始まりました。やはり関西圏と首都圏では、マーケットの大きさが全然違いますし、そのジャンルが売れそうな書店を選んで配本してもらえるので、とても効率がいい。紀伊国屋や丸善のようなメジャーな書店に並ぶようになると、やはり売れ行きが断然違います。そこでようやく手製本から解放されて、本の印刷を頼めるようになりました。

大手書店で実績があれば、後の営業はそんなに難しくはありません。他の取次さんとも取引が始まり、売上も順調に伸びていきました。そして、最初の頃にあれだけあった在庫も、数年がかりで見事に捌けたのでした。

いやあ、懐かしい話です・・・

当時は印刷用のデータを始め、ポップやチラシ、ホームページやネットショップまで、全て自前で作りました。何もわからないので悪戦苦闘の連続でしたが、その時の経験があったからこそ、何とか食べていける程度のスキルが身についたのだと思います。

いわしは本が好きですし、出版業界での経験が自分の仕事の基礎につながっています。それだけに、出版業界には深い思い入れがあります。出版業界はこれからも大変でしょうけど、出版状況クロニクルで業界事情をチェックしながら動向を見守りたいと思います。

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