申告書を自分で作成できる法人税申告書作成ソフト「全力法人税」と、マネーフォワード クラウド会計のデータを使って2期目の申告書を作成したので、その手順をご紹介します。
初めて全力法人税を使う時は、会社の基本情報や株主名簿などを一から入力しないといけませんが、2期目以降は「次年度へ繰り越す」処理をしてから、仕訳データを取り込んで情報を入力するだけなので、初回よりも簡単に申告書が作成できます。
もちろん、申告書の数字や別表の作成は自動で行われ、黒字決算の場合は、納付する法人税や地方税の計算までしてくれるので大変便利です。
全力法人税の利用料金は、初年度が 19,800円+税ですが、次年度以降は 10,000円+税で済みます。税理士に申告書作成を依頼する費用と比べても、はるかに安くなります。
ここでは「マネーフォワード クラウド会計」からデータを取り込む方法を紹介していますが、freeeや弥生会計などを利用する場合も手順はほぼ同一です。
全力法人税で初めて申告書を作成した時の記事は、以下をご覧ください。今回と同様に、会計データはマネーフォワード クラウド会計から取り込んでいます。
この記事で省略している項目も詳しく説明しているので、わからないところがあれば、両方見比べると申告書の作成が捗ります。
全力法人税 申告書作成の流れ
全力法人税で申告書を作成する場合は、基本的にメニューにある項目の左から順番に情報や数値を入力していくという流れになっています。
まずは「基本情報登録」で会社情報や申告情報を入力して、「インポート」で会計データを取り込み、「固定資産台帳」で減価償却資産を追加し、「勘定科目内訳書」で各項目を入力します。
初回利用時は会社の基本情報登録が必要ですが、それ以降は入力済みの情報がそのまま使えます。
あとは会計データを取り込んで、固定資産や勘定科目の数値を入力するだけで、数値や情報をもとに税額を計算して、申告に必要な書類が自動作成されます。
入力途中でも、上のメニューから項目を選んで修正したり、会計データを再取り込みしてやり直せるので安心です。内容に間違いがなければ、料金を払って申告書一式を印刷してください。
申告書や各種別表の他に、事業概要説明書や地方税の申告書まですべて揃うので、あとはハンコを押して申告書を提出して、法人税や地方税を納めればOKです。
あと、全力法人税は「時間や手間や費用をかけず、初心者でも簡単に申告書作成ができる」ようにするため、あえて省略している機能があります。
例えば、消費税の申告書や、別表6(所得税額控除)、別表10(6)は作成できません。多額の受取利息や配当収入がある場合は、別表6を作成しないと控除が受けられないのでご注意を。
あと、手元に参考書が一冊あると作業が捗ります。以前に自分で申告書を作成した時は、この本がとても参考になりました。各項目の意味や書き方がわかるのでオススメです。
次年度へ繰り越す
では、2期目以降の申告書を作成してみましょう。まずは次年度へ繰り越す処理から始めます。全力法人税は以下からログインしてください。
トップページのメニューにある「次年度へ繰り越す」をクリックします。
次に翌期への繰越処理を行いますが、その前に右上の決算期を確認してください。前期のままであれば、「翌期へ繰越し」をクリックして処理を行います。
「決算処理を完了しました」と表示され、決算期が変わっていればOKです。続いて「申告書を作成する」をクリックします。
基本情報の確認
申告書を作成する前に基本情報を確認します。最初に入力した基本情報をそのまま使いますが、会社移転で住所を変更したり、役員や株主構成が変わった場合は修正します。
修正の必要がなければ、「次へ」をクリックして先に進んでください。
ここで一つ注意点があります。全力法人税で会社の情報や会計の数値を変更した時は、そのページで必ず「保存」してください。保存を忘れて先に進むと、変更が反映されません。
株主名簿の確認です。ここも変更がなければ次へ進み、修正する場合は「編集」を行います。
続いて申告情報です。経理責任者や期末従業者数の変更がないか確認しましょう。本社移転や取引銀行の変更があった場合は、還付金の振込口座や申告書の提出先もチェックしてください。
仕訳データを取り込む
申告書を作成するために、会計ソフトから仕訳データを取り込みましょう。
ここではマネーフォワード クラウド会計を使っていますが、freee、弥生会計も会計データを取り込むだけで申告書が作成できます。他の会計ソフトでも手入力すれば作成できますよ。
あと、消費税を税抜経理方式にしている場合は、事前の設定が必要です。詳しくは以下のマニュアルを参照してください。
仕訳データインポートのページに、弥生会計・freee・弥生会計オンラインから仕訳データを取り込むためのマニュアルがあります。不明な点があれば参照してください。
クラウド会計から会計データを取り込む
では、マネーフォワード クラウド会計から会計データを取り込みましょう。左メニューから「各種設定」→「他社ソフトデータの移行」を選択します。
移行データは「弥生会計」を選んでください。
仕訳データをエクスポートするため「エクスポート」をクリックします。
エクスポートするデータ形式を設定してから「エクスポート」をクリックしてください。デフォルトと違う部分は赤にしています。
- 書式は「汎用形式」に変更
- 「開始日」と「終了日」は自動で入力されます
- 勘定科目は「全て」
- ソート順は昇順
- 「開始仕訳もエクスポート対象に含める」にチェック
- 「未実現仕訳もエクスポート対象に含める」はチェックを外す
あとは作成されたエクスポートデータをダウンロードしてください。
申告書を作成する
では、取り込んだデータを元に申告書を作成しましょう。申告書作成方法は「弥生会計・マネーフォーワード・freeeの会計データを取り込む」を選択してください。
仕訳データインポートで仕訳ファイルを取り込みます。まずはインポート元の会計ソフトを選び、仕訳ファイルをドラッグ&ドロップするか、クリックしてファイルを選択してください。
「取り込み開始」をクリックすると、仕訳データの取り込みが始まります。
「正常に読み込むことができました」と表示されたら、「登録する」をクリックします。
データを登録したら、「残高試算表を確認する」をクリックしてください。
会計ソフトで作成した決算書または残高試算表を見て、全力法人税でデータを登録した後の貸借対照表と損益計算書の数字が一致しているかを確認します。
一致しない場合は、取り込んだ会計データに間違いがあります。インポートに戻って「取り込みデータ一括削除」で取り込んだデータを消去して、会計ソフトで元のデータを修正してください。
固定資産台帳のデータ取り込み
車や機械工具などの償却資産を購入したら、申告書に減価償却費を反映させる必要があるので、固定資産台帳データを取り込みます。固定資産がなければ飛ばして次へ進んでください。
マネーフォワード クラウド会計の左メニュー「決算・申告」から「固定資産台帳」を選択します。
固定資産の一覧が表示されたら、右上の「ダウンロード」でCSV出力を選びます。
出力した固定資産台帳をインポートします。会計ソフトを選んで固定資産台帳のファイルをドラッグ&ドロップするか、ファイルを選択して「取り込み開始」します。
正常に取り込めたら「登録する」をクリックします。
固定資産をインポートしたら、固定資産台帳に反映されるので確認します。
取得価格が10万円以上30万円未満の固定資産がある場合は、台帳から削除して「少額資産明細」に登録すると全額経費にできますが、1年で300万円までという上限があります。
少額減価償却資産を経費にするための条件をよく読んで、必要な処理を行ってください。
勘定科目内訳書の入力
ここからは勘定科目内訳書の各項目を入力していきます。売掛金や買掛金、棚卸資産、借入金など科目がたくさんあって面倒ですが、別表の作成や税金の控除等で必要になるので、間違いのないように入力してください。基本的に決算書に計上している科目だけ入力すればOKです。
まずは預金口座一覧ですが、差額が発生しているため赤い「!」マークが表示されています。新しい取引銀行口座が残高に反映されていないので、新規登録して修正します。
勘定科目内訳書で数値の合わない項目があると、赤い「!」マークが表示されます。見落とすと申告書の数字がおかしくなるので、必ずチェックしてください。
今回入力した勘定科目内訳書の項目は以下の通りです。会社や事業内容によって必要な項目は変わりますが、全力法人税の指示通りに進めていけば大丈夫です。
- 預金口座一覧
- 売掛金(未収入金)の内訳書
- 買掛金(未払金・未払費用)の内訳書
- 仮受金(前受金・預り金)の内訳書
- 借入金及び支払利子の内訳書
- 人件費の内訳
- 地代家賃の内訳
- 雑益等の内訳書
- 法人税等の納付状況
ただし、各項目の詳細や内容は自分で入力しないといけないのでご注意を。たとえば売掛金の残高がある場合、取引先や期末現在高の内訳をすべて入力する必要があります。
書き方がわからない場合は、内訳書の項目に合わせて「勘定科目内訳明細書の書き方の基礎」などのマニュアルや注意事項が表示されるので調べてください。
入力したら各項目の右下で差額がないかチェックして、最後に「保存」をお忘れなく。
別表の作成
ここからは別表の作成に移ります。支出交際費等の額の明細(別表15)は、仕訳データから自動的に支出額と損金不算入額が計算されるので、記入は必要ありません。
法人税等の納付状況(別表5(2))は、自分で入力しないといけません。通常は期首未納税額を2カ月以内に全額納付しているはずなので、納税充当金納付の項目に入力します。
青色欠損または災害損失金がある場合(別表7)も入力が必要です。欠損金の繰越期間は9年(平成30年4月1日以後開始事業年度は10年に延長)なので、最大9期分の欠損を入力します。
期中の欠損金は自動で取り込まれますが、繰越欠損金は決算書から取り込めないので、1期分ずつ入力する必要があります。ここを空欄にすると欠損金の繰越しができないので、赤字決算の場合は必ずチェックしてください。
所得金額の計算に関する明細書(別表4)は、いままで入力した項目を元に自動で計算してくれます。所得の調整も可能ですが、通常はこのままでOKです。
利益積立金額及び資本金等の額の計算に関する明細書(別表5(1))と、納税充当金の計算(別表5(2))です。期中の所得金額から法人税や道府県民税、市町村民税の額を自動で計算してくれます。
納税充当金の計算です。納付する税金の額はここで確認します。税額は基本的に自動計算されるので入力する必要はありません。
あとは地方税の税率設定と事業概況説明書を登録しますが、初期設定から変更がなければそのままでOKです。主要科目の内訳や月別の売上高は自動的に入力されます。
最後にマネーフォワードクラウド会計に戻って、法人税等に関する仕訳を指示通りに追加します。
この仕訳を追加してから再度仕訳データをインポートすると、申告書の内容がおかしくなります。決算修正後に改めてデータをインポートするときは、この仕訳を削除してください。
これで申告書作成に必要な情報は全て入力できました。下に進んで「作成した申告書を見る」をクリックします。
申告書の出力
最後に申告書の出力です。2期目以降の料金10,000円(税抜)を支払うと申告書を出力することができます。あとは「すべてを出力」にチェックを入れて「PDF出力」ボタンを押してください。
PDFで出力された申告書や明細書を一通りチェックします。申告書の数字は、以下を参照して間違いがないか確認してください。
申告書のチェックポイントは以下の通りです。決算書の損益計算書・貸借対照表と、申告書の数値が一致しているかどうかを確認します。
- 別表4の当期利益の額と、損益計算書の当期純利益の額の一致
- 別表5⑴の繰越損益金と、貸借対照表の繰越利益剰余金の額の一致
確認したら申告書一式を印刷しましょう。あとは申告書に代表者と経理責任者名を記入し、印鑑を押印して、税務署と地方税事務所で申告書を提出すればOKです。
申告書以外の別表や事業概況説明書、地方税の申告書も作成できます。
申告書は提出用と控え用として、必ず2部作製してください。申告書の提出方法や納付書の書き方は以下を参照してください。
法人税・地方税の納付
申告書の提出が終わったら、法人税や道府県民税・市町村民税等を納付します。
納付書は自分で作成する必要があるので、納税先の各自治体や市町村ホームページから納付書をダウンロードしてください。
自治体によっては、納付書作成用のエクセルシートをダウンロードできるところもあります。法人名や税額を入力するだけで、納付書が自動で作成されるので便利です。
黒字決算の場合は法人税の納付も必要です。納付書は税務署から送られてくる書類の中にあります。法人税の納付書は2種類作成しないといけないので注意してください。
全力法人税で申告書を作成したことがあれば、2期目以降の申告書作成はそれほど難しくないでしょう。以後はずっと1万円で使えるので決算費用も節約できます。
最初に全力法人税で申告書を作成するときは、以下の記事を参照してください。初期設定や事業所情報の入力など、ここで省略した手順もすべて解説しています。