「マネーフォワード クラウド会計」で補助金・助成金を受給した時に必要となる会計処理「圧縮記帳」と、勘定科目「固定資産圧縮損」の追加について解説します。
法人で補助金・助成金を受給して機械や設備などの固定資産を購入した場合は、「圧縮記帳」という制度を使って固定資産を償却する会計処理を行います。これによって補助金・助成金の支給年度に課税されることを防ぎ、税金の支払いを繰り延べることができます。
しかし、マネーフォワード クラウド会計には圧縮記帳に必要な勘定科目「固定資産圧縮損」が用意されていません。マネーフォワード クラウド会計に補助金・助成金の受給を反映させる場合は、勘定科目に「固定資産圧縮損」を追加する必要があります。
ただし、圧縮記帳の対象にならない補助金や助成金もあるので、固定資産圧縮損を計上する場合は、必ず実施団体に確認してください。
補助金・助成金受給時の会計処理 圧縮記帳
中小企業・小規模事業者向けの補助金・助成金はいろいろな種類があり、上手に利用すれば設備投資や雇用の際に大きな支援を受けることができます。
有名どころで言えば、創業補助金・ものづくり補助金・小規模持続化補助金などの各種補助金や、雇用・研究・地域振興・環境などを対象とした各種助成金でしょうか。
中小企業庁のサイト「ミラサポ」に補助金・助成金の情報がたくさん掲載されています。ご参考まで・・・

さて、補助金や助成金で固定資産を購入すると、減価償却費を引いた部分が利益となり、その分に課税されます。補助金によっては1000万を超える支給が受けられるので、きちんと処理しないと税金でかなり持って行かれます。
雇用などの助成金は、もらった分がそのまま経費として出ていくので税金の心配は不要ですが、高額の固定資産を購入した場合は減価償却分しか経費にならないため、資産として残った部分に税金がかかってしまいます。
これを防ぐために固定資産圧縮損を経費として計上し、支給された補助金や助成金に課税されないようにします。この会計処理を圧縮記帳といいます。
預金で100万の機械設備(償却期間5年)を購入し、補助金が50万支給されたときの仕訳はこうなります(減価償却は定額法で計算)。
借方 | 貸方 | ||
機械設備 | 1,000,000 | 預金 | 1,000,000 |
減価償却費 | 200,000 | 機械設備 | 200,000 |
預金 | 500,000 | 補助金 | 500,000 |
会計上、補助金50万-減価償却費20万=30万の利益が発生するので、その分に課税されてしまいます。
本来、補助金は利益ではありませんが、会計上は補助金にも課税されることになるので、そのメリットが薄れてしまいます。そこで、圧縮記帳を用いて補助金分の固定資産を減額します。
借方 | 貸方 | ||
機械設備 | 1,000,000 | 預金 | 1,000,000 |
減価償却費 | 200,000 | 機械設備 | 200,000 |
預金 | 500,000 | 補助金 | 500,000 |
固定資産圧縮損 | 500,000 | 機械設備 | 500,000 |
圧縮会計を使って固定資産圧縮損を計上すると、補助金50万-減価償却費20万-固定資産圧縮損50万=20万の赤字となるので、税金は発生しません。この処理によって補助金のメリットを最大限に活用することができます。
ただ、圧縮記帳にすると税金がゼロになるというわけではありません。減価償却費を先食いして課税を繰り延べるだけなので、後から利益が出た場合は税金がかかります。
マネーフォワード クラウド会計 圧縮記帳の処理
これで圧縮記帳の処理方法はわかりました。では、マネーフォワード クラウド会計で圧縮記帳を反映させてみましょう。
圧縮記帳に用いる固定資産圧縮損は、仕訳入力の借方に入力します。しかし、マネーフォワード クラウド会計の勘定科目には「固定資産圧縮損」が存在していません。
マネーフォワード クラウド会計のFAQで「圧縮記帳」「固定資産圧縮損」について検索してみたのですが、マッチする項目が見つかりませんでした。元からその科目がないということでしょうか。
確かに補助金や助成金の会計処理なんてそうそうある訳ではないし、その処理に必要な勘定科目が用意されていないのも仕方のないことです。とはいえ、これじゃ仕訳ができないぞ・・・
でも、ちゃんと解決策があります。マネーフォワード クラウド会計は「勘定科目の設定」で新しい勘定科目を追加することができます。圧縮記帳の仕訳で必要となる固定資産圧縮損も、自前で追加すればいいのです。
マネーフォワード クラウド会計 勘定科目に固定資産圧縮損を追加
では、新しい勘定科目「固定資産圧縮損」を追加してみましょう。まずは上メニュー右側の「設定」から「勘定科目の設定」を選択してください。
続いて、下に表示されているボタンの中から「決算書科目追加」をクリックしてください。
ここから新しい勘定科目「固定資産圧縮損」を設定します。まずはカテゴリから「特別損失」を選びます。
決算書科目、勘定科目ともに「固定資産圧縮損」を記入し、税区分は「対象外」とします。検索キーの設定ですが、この項目はほとんど使う機会がないので不要です。最後に「作成」をクリックしてください。
これで新しい勘定科目「固定資産圧縮損」が追加されました。決算書にもきちんと反映されます。
ご覧のとおり、仕訳入力の勘定科目に「固定資産圧縮損」が追加されていますね。
損益計算書の「特別損失」科目にも「固定資産圧縮損」が追加されています。
あとは圧縮記帳のルールにしたがって固定資産圧縮損を計上してください。
最後に圧縮記帳を利用する際の注意点ですが、圧縮記帳は金額や受給時期によって計算方法が異なります。また、補助金や助成金の中には、圧縮記帳の対象にならないものがあります。
圧縮記帳のことは補助金や助成金の募集要領に記載されているはずです。不明な点があれば実施団体に質問したり、税務署か税理士さんに確認してくださいね。